Web小説「無職転生」の魅力
2013年10月13日、Web小説投稿サイト「小説家になろう」で連載中の看板作品「無職転生 - 異世界行ったら本気だす - 」が更新され、第百二十六話「親」が公開された。
前日に公開された第百二十五話に続いて物語は大きく動き、作者の活動報告(同サイトのブログ機能)でも記されているように第五十八話の伏線が回収された。
「無職転生」の作者の理不尽な孫の手さんは、連載開始当初の活動報告でこう繰り返していた。
ハッキリ言うと、俺が書きたいのはクズニート更生物語ではなく、どこにでもあるような「異世界転生物」なのです。
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1章を読んで感動した!面白かった!という人には申し訳ありませんが、今回『小説家なろう』というサイトにおいて作者が書きたいのは、「テンプレ異世界転生チーレム物」です。
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「小説家になろう」には、主人公が突如現代から異世界に転生し、備わった桁外れな能力を基に複数の異性を虜にしていくという作品が多く投稿されている。
「無職転生」も、確かにそうした「テンプレ異世界転生チーレム物」の小説の一つだ。
しかし、その点だけに注目するとこの作品が含む他の多くの魅力を見逃してしまう。
例えば、「無職転生」は主人公の努力の物語だ。
いきなり大きな目標を立てると挫折しちゃうからな。
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小さなことからコツコツだ。
よーし、頑張るぞ。![]()
転生後の人生で主人公が体験する出来事はその多くが彼の選択と行動の結果として描かれており、能力の獲得についてもその例外ではない。
最大の強みである「膨大な魔力量」も、転生後の幼年期(中身は35歳頃)の決断と毎日の積み重ねによって得られたものだ。
この世界だって、魔力とかなんとか言ってるけど、人間の体の構造は変わらないはずだ。
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基本は一緒。
なら、やることは一つだ。
成長期が終わる前に鍛えられるだけ、鍛える。![]()
さらに、強大な力を手に入れながらも前世の自分にコンプレックスを抱き続ける主人公の物語を通して強調されるのは、「そこから一歩踏み出す」ことの意味だ。
外に出た。
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それだけの事。
ただ、それだけの事だ。![]()
「……それはルイジェルドさん、あなた自身の力です」
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「いや。俺は一人では何もできなかった。
戦争から400年、俺は一人で動き、一歩も前進できなかった。
その俺に『一歩』を与えてくれたのはお前だ、ルーデウス」![]()
主人公、ヒロイン達を始めとして作中一人称で描かれる人物達は、誰もが繊細で強く、行動力があり内省的だ。
彼らが自分との対話と努力を繰り返し、苦悩し、成長する様からは、安易で自慰的な爽快感だけでなく、自分が閉じ籠っていた枠の外に自分の力で出た時の達成感を感じることが出来る。
それと呼応するように、物語自身もこれまでの枠の外へと向かっていく。
人神の正体とは。オルステッドとの再戦の行方は。
そして、新しい身体や家族を得て再び歩むであろう主人公は、果たして元の世界に戻るのか。
俺はこの世界で本気で生きていこう。
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もう、二度と後悔はしないように。
全力で。![]()
この物語がリアルタイムで読めるのは、今だけだ。
- 関連エントリ
- http://news.netpoyo.jp/2013/06/717
上記の記事は、このエントリの内容とは逆に、「小説家になろう」にて特徴的な運や条件無視で簡単に欲望が満たされる「精神のポルノ」の最たる作品が「無職転生」であるとしています。
- http://news.netpoyo.jp/2013/06/717